「母は法の支配とそれを侵そうとする者の間に立ったため、暗殺された」。カルアナガリチア氏の息子、マシューさんは１７日、自身のフェイスブックで悲痛な声を上げた。

事件は１６日午後に発生。カルアナガリチア氏がマルタ北部の自宅を車で出た直後に爆発物が爆発した。詳しい状況は不明だが、車ごと近くの畑まで吹き飛ばされるほどの威力だった。マシューさんは現場に駆けつけ母を車内から助けだそうとしたが、できなかった。

３０年前に現地紙で記者活動を始め、２００８年にニュースサイトを開設。タックスヘイブン（租税回避地）の利用実態を暴く「パナマ文書」が公開されると、独自調査でムスカット首相の妻や側近が関わる資産隠し疑惑など与野党を超え不正を追及し、事件前には「至る所に悪党がいる。絶望的だ」と書いた。

名誉毀損（きそん）で訴えられることもあったが、サイトの読者数は国内紙の総販売部数以上とされ、影響力は大きい。ムスカット氏も疑惑を受け、総選挙前倒しを迫られた。政治サイト「ポリティコ」は昨年末、カルアナガリチア氏を「欧州を揺るがす２８人」の１人に選んだ。

「政治的動機」による殺害が疑われる中、首都バレッタ近郊では１６日夜、市民数千人が追悼に集まり、欧州連合（ＥＵ）の欧州委員会報道官も１７日、「報道は（民主主義など）われわれの価値の核心」と憂慮を表明した。ウィキリークス代表のアサーンジ氏は賞金を用意して犯人の情報提供を呼びかけた。